あきらめ

 私には、なりたい職業がたくさんあった。司書、テレビの裏方、魔法使い、薬剤師、忍者、モデル、パン屋さん、歌手、学芸員、小説家、イラストレーター、教師、カフェの店員、カメラマン、雑貨屋さん、デザイナー、ペットショップの店員、不動産屋さん・・・忘れてしまったが、まだまだあったと思う。私は、全部を諦めて、結局どこにでもいるような事務員になった。朝から夕方までパソコンと向き合う日々を過ごしている。視力はずいぶん落ちたし、身体能力の低下も生活のなかでひしひしと感じる。エクセルの計算式を電卓で確認したり、ねじを締めてまたゆるめたり、ノートに手書きした文字をワードに打ち込んだりといった、誰にでもできて、その上意味があるかどうかも分からない仕事ばかりして、月に10万円と少しと、年に2回ボーナスをもらっている。一言も発しない日もあった。馬鹿にされそうで誰にも言えていないけれど、本当は諦めきれていない夢はいくつもあって、いつでもこんな職場やめてやるからなと思っている。でも、そのわりにはその夢を叶えるための努力をひとつもしていないのを、駄目だなあと思いながら、それに気づかないふりをして今日も終わってしまう。
 有名人に年下が増えてきた。気がついたとき、数年前まで目の前にあんなに広がっていた可能性が、いつのまにか弾けて消えて無くなってしまったような感覚になった。頭がふわっとして、恐怖すら感じた。そういえば、応援していたアイドルも下からの勢いには勝てずに、卒業してしまったんだった。その日は布団から、からだのどこも出ないようにうずくまって寝た。布団の中で、自分はこのまま何にもならずに死んでいくんだと思った。なんで気づいてしまったんだと自分を責めた。
 ここまで長々と書いたけど、今一番やりたいことは、友達4人以下で集まってマリオパーティーをすることです。一人1つお菓子を持ち寄って、出てくるクッパにビビったりしながら。いつからか分からないけど、友達と遊ぶっていうのが、鬼ごっことか、友達の家でゲームをすることじゃなくて、ショッピングとか、スターバックスでおしゃべりすることとかとイコールで結ばれてしまった。異性の友達と遊ぶのに他人の目が気になるようになってしまった。CDの貸し借りは、交際までの1つのステップとしてとらえられるようになってしまった。何も考えずにみんなと同じようにできればいいのに、大人になればよかったのに、こんなことに気づいてこんなことを考えてしまって、ほんとうに駄目だな。